「釜山と福岡の文化交流を通じた民間レベルの役割について」
柳永珍(北九州市立大学特任講師)

Gate 10 Korea – Fukuoka

2020.01.18 @福岡市美術館1Fレクチャールーム

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トークを終えて

簡単な感想を述べたい。日韓関係が決して良いとは言えない最近である。そして、日本と朝鮮半島の間で行き来した文化芸術に関して多様なテーマと視座からのお話が今回のAAAFで共有できた。まずは、そのような共有の場が様々な形で絶えずに続いていることを非常に嬉しく思っている。実は文化というのはいわゆる芸術やアートから、大衆文化やサブカルチャー、日常生活まで多様な分野を含んでいる。つまり、文化の交流は生活から精神的な面まで両方の経験であり、理解の源泉であり、新しいことを生み出す融合の始まりでもある。文化の意味が軽くないということはすでに様々な理論や政策方針からも証明されていることである。
福岡と釜山の間の文化交流は、芸術家の面からも、政策面からも、そして読者の面からも省察が必要になったのは確かである。その様々な面を論評することは難しいとしても、原論的な意味で一つははっきり言える。健全な社会は、何が正義か、何が正解か、何か正当か、が決まっている社会ではない。その「何か」について悩む時間が充分にある社会であると思う。より良いことをあちこちで時間をかけて討論できる、その時間の長さが健全な社会のパラメータであると思う。文化ということは、現実の「当然」という観念に亀裂を入れてくれるもっともよいコンテンツである。そして、その亀裂を成熟した討論と対話で埋めていくことが要求される時代が今である。文化交流という大事な機会に関しての理解と、それを享受できる余裕、そしてその中でたっぷり何かを考えられる市民意識が、今回のAAAFのトークの到着点ではないだろうか。

柳 永珍(リュ・ヨンジン)

スピーカープロフィール

柳 永珍(リュ・ヨンジン)/RYU Youngjin (北九州市立大学特任講師)
1984年韓国釜山広域市生まれ。社会学修士と経済学博士を取得後、現在北九州市立大学地域戦略研究所在職中。主に文化経済学、経済政策、日韓比較に関する研究を進めている。